「形見分けで親族同士のトラブルに発展した」「遺品整理で誰がどの形見を貰うのかもめた」など、形見分けのトラブルで悩んでいる方は多いでしょう。
形見分けは故人が持っていたものを親族や友人たちで分け合う大切な作業です。
だからこそ、慎重に進めていかなければ親族同士で不仲になってしまうなどのトラブルが起きてしまいます。
本記事では、形見分けで起こることが多いトラブルを踏まえ、対処法や注意点を解説しましょう。
この記事を読むことで、形見分けのトラブル対処法や遺品整理をスムーズに進めるコツなどが分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。
形見分けとは?
まずは、形見分けがどんな作業なのか基本情報をチェックしましょう。
故人との思い出が詰まったものを分配する
故人が所有していた物は「遺品」といわれ、衣類、靴、バッグ、家電、家具、写真、手紙など、様々なモノが遺品にあたります。
遺品の中でも、特に故人が大切にしていた愛用品・思い出の品などを、故人の近親者や親しかった人の間で分配し合うことを「形見分け」といいます。
たとえば、故人が身に着けていたアクセサリーや愛用していた日用品、家具などが形見にあたります。
形見分けは通常、金銭的価値が殆どないような物に限定し、財産価値のあるものは遺産分割の対象とするのが普通です。
形見分けは、故人との思い出をいつまでも大切に温めるための作業です。
形見分けでもらった品を見るたびに、故人との思い出が蘇(よみがえ)るでしょう。
故人の姿形が思い起こされるようなものだからこそ、故人の形見となります。
故人との思い出が蘇るものは人それぞれ異なるので、遺品整理をしながら十分に話し合うことが大切です。
四十九日を目安に行うのが理想
形見分けは何日にすべきと決まっていませんが、四十九日などの法事を目安に行うのがベストだといわれています。
法事では親族や交流のあった人たちが集まりやすいときでもあるため、形見分けがしやすくなるからです。
できれば、親戚縁者が集まりやすい日をねらって形見分けをした方がトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
最近では、親族同士でトラブルにならないよう、生前に形見分けをする人が増えてきました。
生前の形見分けは、自分の意思で相手に贈ることができるメリットがあります。
故人の近親者・親しかった人が対象者
形見分けの対象者にルールや決まりはありませんが、一般的に故人の近親者や特に親しかった人が形見分けの対象者となります。
前述したように、形見分けはいつでも故人を偲ぶことができるように行われるものなので、故人に対して同じ気持ちを持っている人なら対象者になり得るでしょう。
配偶者や子共はもちろん、孫・子共の配偶者・友人でも構いません。
形見分けで起こることの多いトラブル
それでは、形見分けで起こることの多いトラブルをいくつか紹介します。
渡し方や口約束で親族・親族以外と揉めてしまう
形見分けでよくあるトラブルが、形見の渡し方や口約束によって親族または親族以外との間で揉めてしまうことです。
たとえば、「あの大きな絵画とオブジェを故人からもらう約束をしていた」と周囲に伝える人がいれば一気に雲行きが怪しくなります。
遺言書にしっかりと書かれていれば誰も文句はいえませんが、その人自身が勝手に発言している場合は大問題です。
たとえ、事実であったとしても口約束では他の親族とトラブルになってしまいます。
また、故人の所有物を勝手に親族以外に渡したことでトラブルになるケースもあるでしょう。
あくまで、故人の所有物はすべての親族(配偶者や子どもなど)に相続権があり、相続権のある人の同意を得ずに勝手に親族以外に渡してはいけません。
間違って思い出の品を処分してしまう
遺品整理の段階でよくある形見分けトラブルとして、間違って思い出の品を処分してしまったというケースがあります。
自分にとってはゴミと同じものだとしても、他の人にとっては故人との思い出が詰まっている大切なものかもしれません。
思い出が詰まった遺品を勝手に処分してしまうと、親族同士のトラブルに発展するケースがあります。
遺品整理では親族との話し合いがとても重要になるため、どんなものを思い出として残しておくのか事前に確認することが大切です。
高価な形見の取り合いに
遺品の中にはアクセサリーや宝石など、高価なものもあるでしょう。
高価な品々の形見分けでは、よく親族同士の取り合いによるトラブルが起きています。
高価なものを自分のものにしようと、勝手に遺品整理を始める人も出てくるので注意が必要です。
また、価値が非常に高い遺品は形見分けの対象とせず、「遺産分割の対象」となります。
遺産分割の対象となるものは、遺産分割協議によって誰が相続するかを決めることになるでしょう。
形見分けのトラブルが発生した場合の対処法
どんなに気をつけていてもトラブルが発生することはあります。
トラブルが発生したときの対処法をチェックしておきましょう。
まずは問題を把握することが大切
親族または親族以外との間でトラブルが起きると、どうすればいいのかパニックに陥る傾向があります。
気持ちの整理ができないまま、トラブルが長引いてしまい親しかった親族とも音信不通になってしまう恐れがあるでしょう。
最悪な事態にならないためにも、まずは問題を正しく把握することが大切です。
どんなトラブルが起きているのか、どんな状況になっているのか、誰がどんなことに対して不満を抱いているのかじっくり考えてください。
そうすれば、トラブルの原因がハッキリと見えてくるはずです。
そして、トラブルが簡単に解決できることか、専門知識を必要とするのか見極めることも大切なポイントとなります。
親族間で話し合いを重ねる
形見分けは親族間でのトラブルが多いため、話し合いが面倒くさくなり解決を後まわしにしてしまいがちです。
けれども、形見分けトラブルから親族が不仲になったり、交流しなくなったりすることもあるのできちんと話し合いを重ねることが重要となります。
なぜトラブルになってしまったのかきちんと問題を正しく把握した後に、慎重に話し合いを行ってください。
冷静に話し合いを進めることでスムーズに解決できることも多くなります。
専門知識を持っている弁護士に相談する
親族間で話し合いをしても解決しない場合は、法律に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
形見分けで相続にかかわる問題が発生すると、どうしても素人では判断しいくい部分が出てくるでしょう。
中途半端な知識では判断を間違えてしまう恐れがあるため、弁護士からの意見がとても重要になってきます。
親族間の話し合いでまとまらなかったとしても、弁護士が間に入ることで丸く収まるケースもあるので安心できるでしょう。ただし、弁護士に依頼する場合は相談料が数十万円かかることもあるため、注意が必要です。
形見分けを行う際の注意点
それでは、形見分けを行う際の注意点をいくつか紹介しましょう。
遺言書・エンディングノートを尊重する
遺言書やエンディングノートがある場合は、そこに記載されている内容を尊重しなければなりません。
生前に形見分けについてわざわざ記入しているということは、親族間で揉めてほしくない・意思を尊重してほしいという気持ちの表れでしょう。
特に、遺言書は相続手続きにおいてとても重要なもので、そのとおりに進めなければならないという法律の決まりがあります。
エンディングノートは法の決まりがないので絶対ではありませんが、遺言書は絶対なので注意が必要です。親族などから不満が出た場合は、故人の意思を尊重する旨を伝えるといいでしょう。
金銭価値が高いものは税金に要注意
アクセサリー・宝石・骨とう品など金銭価値が高いものは、税金に注意が必要です。
相続人が価値が高いものを相続する際は相続税がかかります。
一方、相続人以外の人が高価な形見をもらう場合も、贈与税という税金がかかってしまうので注意が必要です。
「税金のことを知らずに形見を受け取ったら、高額なお金を支払わなければならなくなった」というトラブルも起きています。
そのため、金銭価値があるものを分ける前に、税理士や弁護士などの専門家に相談したほうがいいでしょう。
相続放棄をする場合は形見分けをしない
何らかの理由で相続放棄を考えている人は、形見分けを受けないようにしてください。
相続放棄をしたいのに形見分けを受けてしまうと、相続の意思があるとみなされ相続放棄ができなくなってしまいます。
そのことを知らずに形見分けを受けた結果、相続放棄ができなくなってしまったというトラブルも起きているほどです。
どんな例外であっても認められないため、相続放棄を予定している人は形見分けの対象者から外してもらいましょう。
形見分けの順番を間違えない
形見分けの順番を間違えないことも大切なポイントです。
故人が所有していたものは、基本的に親族全員が同意すれば、誰に渡しても問題ありませんが、日本には目上の人を敬うという文化があります。
そのため、遺品を目上の人の意向を聞かず若い人たちに渡してしまうとトラブルに発展しやすくなるでしょう。
ただし、故人より目上の人に渡すのはマナー違反となります。
目上に当たる人が形見分けを希望した場合は問題ありませんが、年下の人が形見分けをする場合は年上の人に配慮するようにしてください。
形見分けのトラブルに関してよくある質問
形見分けのトラブルでよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.まったく知らない第三者から申し出があった場合の対処法は?
A.冷静に対処することが大切です。遺品整理をしていると、ある日まったく知らない人から連絡が入ることがあります。「実は、故人と深い関係があって……」と交流があった経緯を話してくるかもしれません。その場合、「そんな人は知らない」と拒絶しないようにしましょう。故人と周囲の人との関係性をすべて把握できているとはいえないため、1度その人と面会して話し合うことが大切です。
Q.形見分けをする際の梱包は必要か?
A.基本的に、形見分けにおいてこん包は必要ありません。専用の箱やケースがあればそこに入れて渡すことができますが、裸のまま渡すのが嫌な場合は半紙につつむといいでしょう。半紙につつみ、遺品または偲ぶ草と表書きします。また、遠い場所にいる人に形見分けをする場合は、郵送でも構いません。念のため、事前に形見を送るという旨を伝えたほうがトラブルになりにくいでしょう。
Q.形見分けで残った遺品はどうすべきか?
A.特に思い入れのないものは処分することになります。自治体回収・不用品回収業者・遺品整理業者など、処分方法はさまざまです。遺品は捨てにくいと思うこともありますが、きちんと処分することも供養となります。汚れや傷みがひどいものは自治体回収で処分するか、まとめて回収業者に依頼するといいでしょう。
Q.注意しておきたい不用品回収業者・遺品整理業者は?
A.街中をトラックでまわっている無料の回収業者や、遺品の扱いに慣れていない遺品整理業者には注意が必要です。安易に費用が安いまたは無料の業者に依頼した結果、不法投棄されていたり大切な遺品を処分されたりしてしまうというトラブルが相次いでいます。スタッフの対応が丁寧か、きちんと説明してくれるかなどの確認が必要です。
Q.生前整理・遺品整理で費用を安く抑えるコツは?
A.処分するにもお金がかかってしまうため、形見分けで残ったものは買い取ってもらうといいでしょう。遺品でもまだ使える状態のものは買取対象となります。買い取ってもらうことができれば、処分費用を抑えることができるので一石二鳥です。リサイクルショップ・埼玉出張買取コールセンターでは不用品の回収と買取を行っています。悩んでいる方はぜひご相談ください。
まとめ
形見分けを受ける前に遺品整理されてしまった・報告なしに勝手に形見分けされていたなどのトラブルが相次いでいるため、形見分けは慎重に行う必要があります。トラブルになってしまったときは、話し合いで解決するのが理想です。しかし、協議を重ねてもお互いに納得できないケースがあるでしょう。そんなときは弁護士に相談してください。形見分けのトラブルを未然に回避するには、生きているうちに身辺整理を行うことも大切なポイントとなります。身のまわりにあるものを整理し、自分で形見分けを行うケースも増えているのでぜひ検討してみてはいかがでしょうか。